とある魔法学園の一日 22
22
「神の名をかたらず・神の言葉を代弁せず。
これは我々の祖先が神のゆりかごを追われた歴史に由来する。
神のゆりかごは酷く荒廃し、生命を育むこともできなくなった。
そこで当時の指導者達は神のゆりかごから、このユーテラルムに人々を導いた。
移り住んだこの地では、先の授業の通り、魔導の無法地帯だった。
力を無尽蔵に使えたため、おごった人々の中には自らを神だと名乗る物まで出てきた。
そんな時、恐ろしい力を持った魔物がどこからか現れて、自称・神と関係者をことごとく無に帰した。
神を名乗る者を消してまわるその様はまさに神に敵対する者、魔王だった。
また同じように「神はこう言った」等と、自分勝手に言葉を紡ぐ者達にも悲劇が訪れた。
その者達は全て、異形の存在、魔物と化してしまったのだ」
「それが神に関するタブーの真実かよ……半端ねえな」
「今日では教典を引用することはあっても、神の気持ちや意思をこうであった、等と説く聖職者はいない。
過去このように我々は導かれた、等の様に話すわけだ。
一部のそういう神の教えの中には、複数の神を経典に記されたものもあったが、今では神ではなく先人や超越者として説かれているようだ。
次に人の種に近い物の肉を口にしないタブーだが……。
これもユーテラルムに移住してきた頃の話になる。
この頃の詳しい歴史は未だ長い歴史の記録を保有する大魔法協会から語られずにいる。
しかしどうも食糧難が訪れた時に、やむを得ず同族を食料とした病んだ歴史があると思われる」
「な、何故ですか?」
「そうでも思わないと、人々が自らの意思で同族を食う選択を選ぶと考えたくないからだ。
まぁ結論から言うと、神の意思を自らの都合で代弁した物と同じく、人の肉を口にした者達も異形の者と化したそうだ。
最後に各種族の根源で、俗にオリジンズと呼ばれる者達に関わらないというタブーについて。
大魔法協会創始者達もある意味オリジンズだが、神に敵対する者として現れた魔王たちもオリジンズと言える」
「達?魔王達……ですか?」
「彼らは各地で各々違った姿で出現したことから単一の存在でないことが知られている。
一度に万の魔導師を一瞬で消したこともあるらしいその危険性は、今存在が確認されている魔王の比ではない。
今存在が確認されている魔王達は魔族の中で突出した力を示した者だったり、血統であったり、元が人間の魔導師であったりとほぼ「自称」と言える。
神を自称するのはタブーにかかるが、魔王はそうではないらしい。
話が逸れたが、他にも特に危険なオリジンズが存在するものの中にドラゴンや吸血鬼がいるが、その他様々な種に置いて原初に近い存在は特別だ。
なにせあの魔導混沌期前後から存在する、特異で飛びぬけた存在だからだ。
たとえ我々に敵対していない種族であったとしても、うかつに関わるのはよしておいたほうが良い。
……まぁ私もお目にかかったことは無いけれどね」
三人が三人ともがっかりした顔を見せる。
「ただし、オリジンズから少し時代を下った、エンシェントと呼ばれる存在には出会ったことがある。
エンシェントエルフの大魔導師殿にな」
皆が顔を輝かせ話をせがむのでそこからは授業を少し脱線した……。
………
……
…
「……脱線ついでだ、守護者の話もしておこう」
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